先日入手したプリメインアンプ『
Nuforce Icon』(初代/販売終了)をざっとレビューしたいと思います。

■購入理由
PCのオーディオ環境はUSB DACに
ONKYO SE-U33GXV(B)、アンプにTOPPING TP10-MARK4を使っていましたが、どうにも素っ気ない、つまらない音が不満でした。
オークションで Nuforce Icon が安価に出ているのを見つけ、これならUSB DACとアンプを一つにして省スペース化できるし、音質の向上も見込めると思い、落札しました。
■概要
Nuforce Icon はスピーカー出力の他、USB-DACとヘッドホンアンプ機能を持ち、プリアンプとしても使用可能な多機能プリメインアンプです。
サイズはH150×D106×W32(mm)と非常にコンパクトで、縦置き用のスタンドと専用ACアダプタが付属します。
オーディオ機器としては珍しく、Red、Blue、Black、Silverのカラーバリエーションがあります。
■外観
筐体はアルミ?っぽい、さらっとした手触りの金属製。
前面パネルはパワースイッチ兼用ボリュームノブと、入力切替ノブ、ヘッドフォン出力(φ3.5mmステレオミニジャック)があります。
文字は書いておらず、ボリュームノブ部分には「○」(電源OFF)と「●」(ボリューム最大)マーク、入力切替ノブには「●」(φ3.5mmステレオミニジャック)「●●」(RCA)「●●●」(USB)マークが描かれています。
背面の入力端子部分にも同様のマークが描かれており、どの部分がどの端子の切り替えなのか、一目でわかるようになっています。
背面は専用スピーカー端子(RJ-45×2 L,R)、RCA(入力)×1、USB(USB B端子メス)、φ3.5mmステレオミニジャック×1(入力)、φ3.5mmステレオミニジャック×1(出力)、ACアダプタのソケットが配置されています。

ケーブルの問題でディスプレイの下に横置きで配置することに。
結構発熱するため、手前にゴム足を入れて底面を浮かせています。
■注意書きの多い Nuforce Icon
一般的なプリメインアンプは何も考えずに箱から出して設置しても問題ありませんが、Nuforce Icon は少々デリケート。
まず、輸送時に蓄積された静電気で回路を破損する恐れがあるので放電せよと書かれています。
また、スピーカーまたはヘッドフォンを接続していない状態で電源を入れると回路が破損するとのこと。
設置前に通電確認する人もいると思いますので要注意です。
私も事前に調べていなければ、危なかったかもしれません。
■設置はスピーカーの端子とレイアウトに注意
Nuforce Icon には専用のスピーカーケーブル(1.1m)が付属していますが、本体側がRJ-45(LANのモジュラージャックと同じ)でスピーカー側がバナナプラグという特殊なものです。
そのため、スピーカーがバナナプラグ非対応の場合は
Icon用バインディングポストコンバーターが必要となります。
また、設置の際にスピーカーケーブルの長さが足りない場合は上記のコンバーターを使用するか、2mのオプションケーブルを追加で購入する必要があります。
■高能率スピーカー推奨
Nuforce Icon はアンプの出力が12Wと低いせいか、能率(出力音圧レベル)87dB以上のスピーカー使用が推奨されています。
多少能率が低くても鳴らないわけではないようですが、極端に能率が低い場合はボリュームを最大にしても十分な音量が得られない場合があるようです。
■実際に使ってみる
CDプレーヤーとPCに接続して、スピーカー出力とヘッドホン出力で聴いてみました。
環境は以下の通り。
・スピーカー
DENON SC-A33・ヘッドホン
audio-technica ATH-AD7・CDプレーヤー
CEC CD-3300机の上にスピーカーを置いた状態(いわゆるニアフィールドな環境)で聴いています。
Nuforce Icon を入手する前のPCのサウンド構成は
・USB-DAC
ONKYO SE-U33GXV(B)・アンプ TOPPING TP10-MARK4(中国メーカーの怪しいアンプ。質はいいらしい)
でした。
USB DACの音は上記の環境との比較になります。
○CDプレーヤー → Icon → スピーカーの場合
高音から低音までしっかりと出ており、暖かみのある感じです。
他のレビューでデジタルっぽくないという感想を多く見ましたが、こういうことなんだと納得。
女性ボーカルが伸びやかで、バックの小さい音も明瞭に聞こえます。
今までに試した中では一番いい感じの音で、このスピーカーでこんな音が出るのか…と驚きました。
ボリュームを絞っても音が痩せた感じがしないのもいいところです。
○CDプレーヤー → Icon → ヘッドホンの場合
基本的な印象はスピーカーと同じです。
今までまともなヘッドホンアンプを使ったことがないので比較できませんが、バランスが良く聴きやすい感じです。
○PC → Icon → スピーカーの場合
音源はCDから取り込んだ44.1kHz 16bitのApple Lossless Audio Codecで、プレーヤーはfoobar2000のWASAPI出力を使用。
CDプレーヤーの時と比較すると音が薄い感じになりますが、傾向は同じです。
ONKYO SE-U33GXV(B)の時に感じた素っ気なさと、妙な緩さはありません。
○PC → Icon → ヘッドホンの場合
こちらも基本的な印象はスピーカーと同じ。
気軽に音楽を楽しむなら、十分な音質です。
■Nuforce Icon の気になるところ
最初の扱いがデリケートな部分以外にも、気になる部分がいくつか。
○ポップノイズ
電源を入れると、スピーカーから「ボツッ」というポップノイズが出ます。
説明書には、スピーカーに悪影響を与えることはないと書いてありますが、あまり気分のいいものではありません。
○ホワイトノイズ
無音状態でスピーカーからうっすらとしたホワイトノイズ(サーという音)が聞こえます。
極めて小さい音で実用上の問題はありませんが、神経質な人は気になるかもしれません。
ヘッドホンでは聞こえませんでした。
○ヘッドホンアンプのギャングエラー
ヘッドホン使用時にある程度ボリュームを絞ると、ギャングエラー(左右の音量が異なってしまうこと)が発生しました。
100Ω程度のハイインピーダンスなヘッドホンであれば問題ないと思いますが、低インピーダンスなヘッドホン(audio-technica ATH-AD7は32Ω)を使用した場合は、好みの音量にした時にギャングエラーが出るかもしれません。
○本体の発熱
Iconは分類としてはデジタルアンプですが、アナログスイッチングアンプテクノロジーのためなのか、筐体が意外と熱を持ちます。
縦置きで使う場合は問題ないでしょうが、横置きの場合は底面の熱がこもるので、ゴム足などで浮かせたほうがいいかもしれません。
○USB DACのスペックは高くない
これは承知していたことですが、Icon のUSB DACは32-48kHz/16-bitまでの対応で、最近のUSB DACと比較すると見劣りするスペックです。
また、アナログ信号への変換を1チップで行っているため、
NuForce Icon uDAC の方がアナログ信号の質がいいとのこと。
USB DACの性能を重視するのであれば、他の製品にするべきでしょう。
■まとめ
それなりに使用環境を選び、扱いはちょっとデリケート。短所はそれなりにあるものの、1台で様々な入出力に対応して音質もよく、スピーカーケーブル付属で売価は35,700円。
これはハイコストパフォーマンスといえます。(ただし販売終了)
ブックシェルフスピーカーと組み合わせ、ニアフィールドで楽しむにはもってこいのアンプです。
とはいえUSB DACとしての性能は高くないため、PCオーディオのアンプとしては力不足は否めません。
現行モデルの
Icon2 は各所がアップグレードされ、ビットレートが32,44.1,48,96kHz/24-bitサポートになっているので、こちらであれば満足のいく音質が得られるかもしれません。
もっとも、その分価格も上がって定価¥45,150ですが。
PCと接続しないのであれば、安価でアンプ性能が Icon2 と同等の
Icon Amp のほうがいいでしょう。
コンパクトでちょっといいオーディオが欲しい人に向いていると思います。